今月の初めから2週間弱ラボの観測施設に篭っていたので日記の更新ができなかった。というわけで,今回は1ヶ月分となる。と言いたいところだったが思ったより長くなったので,2つに分けることにする。
先月の前半は日記の通りなかなか充実した毎日を送ったが,後半は一転して低調な日々であった。ここ数ヶ月そうだが,「低調な日々」というのは「ラボに行って何もしない日々」のことを指す。成し遂げたことと言えば,マインスイーパのスコアを3秒更新した程度である。あと5秒で1分台だ。卒業までに100秒切りという目標だが,いまのところ順調である。これからも地道に伸ばしていきたい。…などど言いつつこの半月はやるべきことを多少やっているので大目に見ておきたい。
そして9月前半は前に書いたとおり,ラボの観測所に泊まり込んでいた。観測所は電波すらろくに届かないド田舎だが(wifiはある),のどかで涼しく良いところである。おまけに毎日温泉に入れる。問題と言えば,電話ができないこととwifiの仕様かガルラジをリアタイで聞いていると10分くらいで再生がストップされることくらいである。ここで種々の観測や調査や実験やをやったのだが,今回は書かねばならないことが多いのでこれ以上触れない。観測所のことについては次回行ったときにでももう少し触れたいと思う。
○御在所
観測所に行く直前にEXPASA御在所に行ってきた。もちろんガルラジのための訪問である。ガルラジでは現在各拠点でチームカード配布というのをやっているのだが,そのカード配布数が順位に影響するということで目下最下位の御在所を応援すべくやってきた次第である。
そう言えば前回ガルラジについて触れたときは確か双葉を特に推していたはずだったがなぜ御在所なのかというと,単純に自分の中で御在所のレベルが上って双葉と肩を並べるほどになったからである。また,中央道のそれも東京からの休憩でよく使われる双葉と比べると,新名神が四日市まで延伸した今や利用頻度があまり高くない東名阪に立地する御在所は立地で相対的にかなり不利だろうという打算もある。
ルートとしては,まず京都から東海道,草津線,関西本線,三岐鉄道と乗り継いで山城駅から徒歩でEXPSASA御在所へ向かった。その後山城駅に戻り,三岐鉄道でさらに奥に向かって伊勢治田駅から北勢線の阿下喜駅に徒歩で移動し,桑名に戻ってくるというものである。JR区間は18きっぷ,三岐線はフリー切符を利用した。このルートだと三岐線はフリー切符を買ったほうが50円程度だけ安くなるのだが,三岐線のきっぷは硬券らしいので普通に買っても良かったかも。
まず最初に散策したのはJRと三岐鉄道の乗り換えに利用した富田駅である。近鉄富田の駅前には四日市高校があり,休日の昼間ということで部活であろう制服の高校生たちが駅前のからあげ屋に集まって大変のどかな光景だった。昼飯を御在所で食べることが決まっていなければここで弁当を買いたかったくらいだ。残念ながら乗り換え時間の都合上少し散歩する程度だったが,近くに立派な神社があり気になるところもあったので再訪したいところである。
山城駅からEXPASA御在所までの道路はそこそこ通行量がある割に歩道がなくて結構怖い。そして容赦なく照りつける夏の終わりの太陽は体力を奪っていく。心体をすり減らしながらゴルフ場以外何もない場所を歩くこと30分弱,突然現れた現代的な施設こそがEXPASA御在所である。人気のない裏口の駐車場から扉を一枚くぐった途端あふれかえる人と効き過ぎの冷房はまるで別世界に来たかのよう。もともと空港などに徒歩で行くことが想定されていない場所に徒歩で行くのが好きなのだが,その点でSA徒歩侵入というのはなかなか今後も楽しめそうだ。
まずは下りに行ったが,とりあえず昼飯ということで宮きしめんでカレーきしめんを食べた。なぜこんな変なチョイスなのかと言うと,単純にサービスメニュー的なやつだったからである。チームカードを回収してから上りへ。暑かったこともあって上りは赤福氷の店に凄まじい人だかりができていた。並んでいなかったら食べようと思っていたのだがあえなく撤退。等身大パネルを見てこちらでもチームカードを1枚もらって帰った。全体的に慌ただしかったがこの後の予定もあるので仕方ない。
山城駅に戻り,次の列車の時間まで時間があったので近くの神社に寄ったが,階段がなかなかにハチャメチャな勾配で登るだけで疲弊した。そのうち電車が来て伊勢治田へ。三岐線の線路は指宿枕崎線並にガタガタでめちゃくちゃ縦揺れした。おそらく貨物(セメントや炭カル)が多く走るからだろう。車窓からは鈴鹿の山々が美しい。
伊勢治田はかなり大きな駅で(と言っても貨物の留置線が大量にあるだけだが),利用者もちらほら。ここから阿下喜までは15分といったところ。伝統的というほどでもないけれど落ち着いた町並みで好感度が高い。あとはやたら芸術度の高いマルフクの看板があってテンションが上った。阿下喜の手前で員弁川を渡りながら随分と土砂が堆積している印象を受けたが,これは採石の影響だろう。鳥取の日野川(これはたたら製鉄のための砂鉄の採取が原因)などもそうだが,上流で人間が活動すると土砂が多く発生するのである。
阿下喜駅は北勢線の終着駅で、比較的大きな駅だ。近くに温泉もあるのだが、時間の都合で寄れなかった。駅前の菓子屋で地元名物らしいアイスまんじゅうを買う。店では店主が子供と一緒に店番をしており,田舎らしい風情がある。
北勢線はナローゲージの路線である。ナローゲージとは文字通り線路幅の細い鉄道のことで、日本では他に四日市あすなろう鉄道と黒部峡谷鉄道が採用している。線路幅が狭いということは当然車両も小さいということで、座席間の通路は人ひとりが歩ける程度しかない。車内では温泉帰りの出稼ぎ労働者だろうか,東南アジア系のグループがSNSにアップするのかひたすら写真を撮り合っていた。もう日も暮れる頃に桑名に到着した。
ここまで当日の行動を素朴に描写してみた。どうだろう,なかなか御在所という場所がよく現れていると思うのである。
まず,御在所と山にまつわることについて。チーム御在所と言えば,やはりその特徴は怪異だろう。御在所が怪異というテーマでラジオをやっているメタ的な理由は山が近いことが関係しているという主張をどこかで見た。セカンドシーズン第3回で穂波明莉も「妖怪は人間の情念と抗えない自然の現れ」という趣旨の発言をしていたとおり,山=人間の勢力圏外にして危険の多い場所は怪異との結びつきが深い。そして御在所という名前は鈴鹿の最高峰の名前である(ただし御在所岳とEXPASA御在所はそれほど近くない)。山と言えば双葉と富士川で富士山の話題が,徳光のある白山市には白山の名前も登場するが,御在所が怪異になったのはやはりSAの名前によるのだろう。
これらを踏まえて今回巡った御在所の周辺について考えたい。車窓からの景色の通り,御在所(以降単に御在所という時はEXPASA御在所周辺という意味で用いて御在所岳と区別する)という場所はやはり山が近い場所である。しかし,それだけではない。この一体の山は開発が進んでいるのである。まず,EXPASA御在所に行く途中で通ったゴルフ場や三岐線で輸送していた炭カルを採取する鉱山はその代表例といえる。今回見ていない場所で言えば,御在所岳はロープウェーで山頂近くまで上がれるようになっているし,スキー場も造成されている。そんなわけで,この地域では山は身近であまり脅威ではない場所なのである。ここで明莉の発言の続き,「自然やが脅威でなくなると怪異は町や人の心に宿る」。開発された自然という真の自然と人間の狭間で,カグラヤは生まれたのかもしれない。
もう一点,こんな事を言うのは失礼だが御在所は田舎である。それも,徳光よりよっぽど田舎である。ではなぜ徳光のような都会への憧れのようなものがないのか。これは東京が遠すぎるからではないだろうか。逆に徳光がなぜ都会への憧れなのか,ということも合わせて考えたほうが良いかもしれない。徳光は逆に,東京とギリギリ接続していないのである。北陸新幹線が金沢まで開業したのはつい最近のことだ。しかし白山市は金沢からもう少し福井側,つまりまだ東京の勢力は白山市まで届いていないのである。つまり,簡単には行けないけれどよく耳にする存在,それが徳光にとっての東京であり,高速道路をテーマにした作品で鉄道の話をするのはアレだがこの微妙な距離感が都会への憧れを特に強くしているような印象がある。翻って御在所はと言うと,東京に出るにはまず四日市,名古屋,それからようやく東京ということで,徳光と比べると東京は遠い場所である。大都会が遠いという面が地元へと目を向けさせる要素となっているのかもしれない。
最後にもうひとつ。北勢線に外国人が乗っていたが,三重の湾岸は工業の発達した場所で比較的外国人も多い場所である。また昔から伊勢は参宮道が通るように,人の往来という観点で見ると街の規模の割には豊かな場所なのだろう。人の往来の多い場所では様々な物や風説が飛び交う。情報は交差するごとにその内容を変化させ,その中で多くの怪異は生まれる。ちょっとこじつけが強いが,これもまた御在所と怪異というテーマにつながっているように思える。
あまりに何でも怪異と結びつけてしまった感もあるが,御在所を歩くことでカグラヤについていろいろと認識を深めることができた。運営は多分そんな深い事を考えてはいない気もするが,まあそんなことはどうでもいい。コンテンツを楽しむ際には自分がどう思うかが重要だ。テーマのある旅行は楽しい。