焚き付け

主に日記を書く

Summer vacation 2023

  2023年の7月の1~9にイギリスに行ってきた。1週間の休みに前後の土日含め9日間になるが、かなり長いので独立記事にする。2.5万文字くらいある。

 なぜ急にイギリスかというと、sが来年くらいまでそちらに住んでいるからである。行くとしたら今年しかないので、行くことにした。当初はoも行くつもりでそのために日程を抑えたのだが、よくわからない理由でoは欠席したので結局一人になった。

 今回のコンセプトは『イギリスにもう二度と行かなくていいくらい観光する』だ。これはSがそう言ったからだ。Sはもう数年イギリスに住んでいるものの一度も観光をしたことがなく、自主的に観光する気はないが、今回自分が行くのでこれを機に最初で最後のイギリスを観光しておきたいということである。Sに対してはめちゃくちゃやっても問題ないという信頼があるので、自分も気合を入れてやりたい放題の日程を組んだ。

 

 

〇出発前

 日程を決めたのが6月のはじめ、飛行機は6月中旬に抑えた。半月前なので結構値上がりしており、行きはハノイ経由ベトナム航空で6万ちょっと、帰りはカタール航空ドーハ経由で12万くらい。帰りの方が大幅に高いのは、おそらくヨーロッパのバカンスが始まりかけているからだろう。実は北京経由中国国際航空19万円もあったのだが、行きを買ってから気づいた。今考えればそちらにしておくべきだったのだが…。

 荷物に関しては、山に登る予定があるので軽量化を重視した。ちょうどいいサイズのザックがなかったので、出発の前の週末に神田のカンダハーでミレーの25リットルのザックを購入。日帰り~1泊の登山でも使えるサイズのものを元々欲していたのだ。25というと小さく聞こえるが、天蓋付きなので実態はもっと入る。そしてこれなら飛行機で預け入れせず機内に持ち込める。その他荷物に関しては服が3日分程度(一部は道中パージ)と防寒着、それに電源回りと風呂セットくらい。あとは山に登るつもりだったので、ヘッドライトなど最低限の登山道具を用意しておいた。とは言え足回りは普通のスニーカー。普段履きの靴がめちゃくちゃ靴擦れするので、こちらも前日に近所の靴屋で5000円しないくらいの新しいのを買った。

 あとは出発前に初日の移動として夜行列車を予約した。Caledonian Sleeperという、イギリスに残る最後の夜行列車だ。夜間に移動することは旅程圧縮においては重要だが、夜行列車はすぐに埋まってしまうので早めに予約しておく。と言っても、もう寝台車は埋まっていたので普通の座席だが…。

 最後に、楽天モバイルを一時的に契約することで電波を確保した。2GBまでは海外ローミング可能で、一応その後も100kb制限がかかるものの利用可能。ただし、3GBを越えると料金が増える点には注意が必要だ。普通に行くだけなら海外のeSIMでもいいと思うが、今回は一応ベトナムパートがあるので幅広く使えるこちらを選択した。なお、海外eSIMでも楽天モバイルと大して値段は変わらない。というか、海外ローミングが含まれているahamoを普段から利用するのが一番いいと思う。

 長々とこういう準備に着いて書いても仕方ないので、さっさと本編に入る。

 

〇7/1

 9時くらいの飛行機で成田からハノイに移動。行きにオンラインのeチケットでセキュリティを通過したら、登場時には紙の航空券が要ると言われ呼び出しを食らった。まあ預け入れ荷物もないのにチェックインの列に並ぶよりも呼び出しのほうが良い。ハノイまでは確か6時間くらいで、14時半だったかに着いた。入国審査のゲートで異常に進みが遅い列に並んでしまい、結構腹が立つ。入国審査自体は何も聞かれずに通過。

 ハノイ滞在はせいぜい半日でそのために両替するのももったいないなと思い、ドンを持っていそうな人に聞いてみたところ、少しだけ持っているとのことだったので24万ドン(日本円1500くらい)借りていた。1500円というとかなり心もとない金額だが、これでハノイに出ることにした。ノイバイからハノイ行きのバスは観光客向けのと地元民向けのがあり、観光客向けは2万ドンくらいするのだが地元民向けは8000ドン。今回は予算も少ないので当然地元民バスで向かう。何を言っているのか一切分からないが、とりあえず金を払えばどうにかなる。

 バスはかなり飛ばす。乗り降りの時もかなり雑なのでぼけっとしているとすぐ発車しようとする。ハノイの中心まで40分くらいか、客はほぼ全員ベトナム人で、なぜか一人やたら慣れてそうな日本人(おそらく)がいた。

 16時くらいにハノイ中心街に到着。中心街と言ってもハノイも広いのでよく分かっていないが、おそらく旧市街側と思われる。夜のうちにノイバイに戻る必要があるのでそんなに時間はなく、適当に散歩した。20時くらいのバスで戻ってこの日はノイバイで寝た。以下コンテンツ的にベトナムの雑感を。

ホーチミン廟だのタンロン城跡だのそのへんを歩いたが、時間が遅く入らなかったのでわざわざこの辺を歩く必要はなかった。ごちゃごちゃした路地裏を歩く方が楽しい。が、東南アジアらしく交通事情は完全に終わっている上にとんでもなく蒸し暑いので、あまり路地歩きはお勧めはしない。交通に関して言えば、当然のように四方八方からバイクが飛んでくるが、慎重に機を見て臆せず歩けば問題ない。

・晩に謎の店で食べたフォーと思われる麺類(4万ドン)を食べた。あとはサークルkで飲み物とアイスを買った(3万ドンくらいだったか?)。見ている感じ、コンビニのものの値段は日本とそう変わらず、こういう既製品は料理と比べると相対的に高い。食品は基本的になんでも個人商店とか屋台とかで買った方が安上がりだ。ただし衛生面は知らん。

・路地裏を適当に歩いていたらいたおばちゃんから果物を買った。ライチ、竜眼ランブータンマンゴスチンあわせて約1kgで4万ドン。会話の中で、1kgはベトナム語でモッキロということだけは理解できた。おそらく適正価格くらいだと思われる。あとで行商人が集まる市場っぽいところで見たら、値段は知らないが鮮度はそっちの方が良さそうであった。そしてスーパーよりも鮮度が良いので、果物は露天商から買うのが最も良い。味はマンゴスチンが一番好み。ただし歩留まりは悪いが…。ライチは最近生も結構日本に入荷するのでありがたみは薄いが、やはりこちらだと安いしおいしい。

ハノイに限らないと思うが、個人商店が非常に多く、ミニスーパーみたいなのを除けばほぼスーパーはない。そういうわけで、意外と買い物には困った。大きなスーパーとしては唯一あったロッテマートに行ってみたが、レジの並びが多くかつ案外高いので何も買う気にならなかった。

・英語はほぼ通じない。どうコミュニケーションしているのか自分でもよく分かっていないが、なんだかんだどうにかはなる。が、相手の言っていることが理解できないと単純にいやな気持ちにはなる。そういう意味では自分が海外に向いていない可能性がある。

・ノイバイで空港泊する人はほとんどおらず、快適。ただし、23時くらいまでは迎えとかで結構ベトナム人がいる。お子様が寝ている自分の近くを荷物カートで爆走しており恐怖を感じた。



〇7/2

 飛行機が朝9時くらいなので、起きてから少し空港近くの町を散歩した。朝食にバインミー(2万ドン)を食す。空港の半値よりもう少し安いくらいか。正直ハノイみたいな都会よりこういう小さな集落の方が好きだ。

 ロンドン行きの飛行機はB787だったが満員で、ヨーロッパ人が多め。隣のベトナム人が進出してきて結構うっとうしかった。ハノイからロンドンまで13時間かかるのだが、東京から行くのと比べて全く近づいていない。途中航路的にヒマラヤ付近を通るのではと左窓側の座席にしていたのだが、ロシアを通れない関係か普通に西に飛んで行った。右の窓側だったらバングラのデルタとかテヘランとか見れたはずなので、右が良かったらしい。ところで、ベトナム航空は機内食がうまく、とくに夕食で出てきた中華風のチキンがかなり良かった。カップ麺が頼めばいつでももらえたのだが、なぜか横の横のベトナム人(おそらく横のベトナム人の嫁)が頼んで自分にもよこしてくれた。エースコック製で海鮮風の謎肉が入っていたが、日清のカップヌードルよりおいしかった。流石はインスタント麺先進国。

 

 ヒースローからは地下鉄ピカデリー線で中心部へ。エリザベスラインというちょっと速いのもあるが、こちらの方が安い。17時ごろ、ユーストン駅でsと合流した。なんでも買った切符の日付が違ったり、電車が遅れに遅れたりで大変だったと文句を言っていた。半分は自分の責任だろうが。

 前にも書いたがこの日は夜行列車なので、それまで時間を潰すために適当に散歩した。まずはロンドン動物園の横のローズガーデンへ。タダだから。あと近い。まあ大した場所ではなかった。日本庭園と称した謎の場所があった記憶がある。その後、トラファルガー広場の辺まで散歩。日曜日はスーパーなどが閉まるのが早いらしく、開いている店は少なかった。晩飯はsohoまで歩いてフィッシュアンドチップスを食べた。15ポンドくらいか、量は多いがそれ以上に高い。数少ないまともなイギリス料理みたいな面をしているが、衣つけて揚げただけなので、そんな誇られてもという気がする。

 

 開いているスーパーで買い出ししてユーストン駅に戻る。駅では列車に変更が出たのか掲示板の前で多くの人が途方に暮れていたが、自分たちが乗る列車は特に変更がなかった。出発の20分ほど前に乗り込む。

 今回乗るカレドニアンスリーパーはサンライズ出雲瀬戸みたくハイランドとローランドの2種類がある。前者の方が早く発車し、フォートウィリアムだとかアバディーンだとか、スコットランド北部に向かう。後者はエディンバラグラスゴー行きだ。今回は先に書いたようにローランドの方でエディンバラ行きで、寝台ではなく普通の座席車だ。値段はレールカード利用でエディンバラまでひとり60ポンド弱になる(ダイナミックプライシング制)。レールカードというのは30ポンドで買えて、これを使うとだいたいの列車が3割引きになる。いろんな種類があるのだが、今回はtwo togetherという登録した二人が一緒の電車に乗るときのみ使えるカードにした。個人的にはブリットレールパスよりいいと思う。

 電車はかなり新しく、座席車もシートピッチが広くて快適だし、水とアメニティもある。唯一残念なのは、座席車利用者は食堂車が使えないこと。23時に出発し、割とすぐに消灯した。途中線路上で大休止があり、上りの寝台とすれ違ってから再出発していった。あとはグラスゴー行きとエディンバラ行きの切り離しが途中駅である。

 

〇7/3

 7時半ごろ、ほぼ定刻通りエディンバラに着いた。椅子の枕の位置が欧米人仕様で高かったため、sは首が痛いと言っていた。エディンバラの駅(Edinburgh Waverley)はさすがに大きく、ホームがいろんなところにあって訳が分からない構造をしている。

 適当に朝飯を食べられる店を探し、開いているところに入った。メニューがいろいろあったが、ふたりともscotish breakfastを選択。これも15ポンドくらいするが、イギリスの朝食なので量は多い。普通のイングリッシュブレックファストにスコットランド料理であるところのハギスとかブラックプディングとかが入っている感じだ。どっちもまずいイギリス料理の代表格だと思うが、特にまずいとは思わなかった。sは「まずくないが全部もっちゃもっちゃしている」という感想を残した。確かにねちゃっとした食感の食べ物が多い。トマトを焼いたのが一番うまかった気がする。

 

 食後はイギリス登山の足慣らしということで、町の外れにあるArthur's seatという山(丘?)に登った。文字通りアーサー王玉座という意味だが、由来についてはいろいろあるらしい。wikipediaの日本語記事がやけに詳しいのでリンクを貼っておく。町のすぐそばの丘ではあるが、下から見上げるとかなりいかつい岩山だ。

ja.wikipedia.org

 行きはホリールード宮殿の方から登った。急な箇所を巻いていく比較的なだらかなルートで、道も広くてあまり山に登っている感はない。自分たち以外にもハイキング客がたくさんいた。どんどん登っていくと北に海が見えてくる。ほどなくしてエディンバラの市街地が見渡せる山頂へ。天気が抜群に良くて素晴らしい景色だが、山頂は吹き飛ばされそうなほど風が強い。あまりに寒いので、早々に下山することにした。帰りは市街地まで最短距離で行ける南西の方に向かって降りたが、こちらは一部岩場のセクションもあり、若干難易度は高かった。登り始めから1時間足らずで下山。エディンバラ観光するなら登っておいて損はないと思う。短い行動時間の割に、景色は大変良い。町からのアクセスも良いし、大文字気分でサクッと登ると良いと思われる。

 

 下山後は町を散歩しつつ、近くのスコットランド国立博物館に行った。ちなみに、イギリスでは国立の博物館、美術館はすべて無料で入れる。すばらしいね(他国から収奪したものなんだからそれくらいやれ)。ここの展示物の最大の目玉はなんと言ってもクローン羊のドリーの剥製だろう。他にそこまで超有名な展示品はないが、ディスプレイの方法が良かったのでなかなか楽しめた。ほどほどで出るつもりだったが、結局1時間半ほど滞在した。

 

 続いて、エディンバラ城に向かう。丘の上に作られた城で、ここがエディンバラ最大の観光コンテンツだろう。町のどこからでも見えて、かなり迫力がある城だ。近くまで行くとものすごい人で、本当に今日は平日なのかと思わせる。入り口のところまで行くと掲示があり、どうやらオンライン予約が必要で今日の枠はもう余っていないらしい。よって、城は見学できなくなってしまった。ゲートは奥にあるのでとりあえず行けるところまで進んでみると、門を抜けてすぐの大広間まで行けた。ここにはミリタリータトゥーの準備のため仮設の座席などが作られていて、城は見えなくなっていた。仕方ないので引き返す。これだけ人まみれの中だとあまり観光する気も起きないので、まあこれでいいだろう。

 城がなくなって時間があるので、北のQueensferryという町にあるフォース橋を見に行くことにした。橋もあるし、単純に自分が小さい町の方が好きというのもある。クイーンズフェリーというと海運会社にしか聞こえないが、町の名前である。フォース橋はこの町の北のフォース湾を渡るための橋で、3本あるうち最も古い1本が建設から100年以上経つ今も現役の鉄道橋として使用され、世界遺産になっている。

 朝たくさん食べて腹が減らないので、昼は近くのスーパーで買い出し。物価高の中で相対的に安いパンとクッキー、ラズベリーとジュースを買った。果物やそれを使ったジュースは日本が相対的に高いので、あまり物価高を気にせず買えるのでおすすめである。

 現地までは駅前から出るバスで向かった。二階建てのバスは降りる場所を伝えて料金は前払いだ。料金は基本的に定額であることが多いようだ。行き先は伝えるものの、日本と同じで降りるときはボタンを押す。30分ほど乗って最寄りのバス停へ。そこから10分余り歩いて、橋の目の前の海岸に着いた。一番古い世界遺産は鉄道橋はトラスなのだが、奥に見える道路橋は吊り橋、もうひとつ奥の橋は斜張橋とそれぞれ違うところが良い。看板を読んでいるといかにもイギリスの紳士っぽい老人に話しかけられたが、内容はあまり聞き取れなかった。その人(祖先かも)は湾の向かいにある海軍のドックで働いていたらしい。フランスの暴動の批判やトランプの嫁か誰かがこの辺に来たかこの辺の出身だかそういう話をしていた気がする。絵に描いたようなジェントルマンだった。別れた後、そのへんにいっぱいあるアイス屋のひとつでアイスを食べる。2種類で4ポンドだったか、写真を撮っていなくて何味にしたのか忘れてしまったがやたら種類が多くて悩んだ記憶がある。味は良かった。見るものはこれで見たので、帰りは電車で戻る。こちらの方がレールカード込みでもバスよりちょっと高い。

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 エディンバラに戻ると夕方だった。この日は19時前の電車のチケットを予約しているので、それまでまだ数時間ある。というわけで、時間つぶしに国立の美術館2館を回った。ひとつはロイヤルスコティッシュアカデミーで、ここは現代アートの展示兼アカデミーで展示が少なかったのですぐに回り終わった。横に国立美術館の本館があるのだが、ここは満員で入るのに待ちが発生していそうだったのでやめにする。ということで、離れたところにあるポートレートばかり集めた分館に行った。なんか有名なやつがあるかというとそんなことはなく、ひたすら過去のものから現代のものまでポートレートが展示されている。sは肖像画の界隈では様式に囚われ過ぎで革新的な取り組みが行われていないというコメントを残した。これに関してはまあその通りだろう。まあしかし、言う通りポートレートだってもっと自由にやって良いはずである。

 17時の閉館とともに追い出され、余った時間でバーに入ってムール貝を食った。スコットランドムール貝が有名らしい。自分もベルギーで頼んで衝撃的な量が出てきたことがあるが、白ワインで蒸したやつがよく食べられかつ美味しいのでそれを頼む。住んでいるノリッジで時々食べることがあるらしいsによると、最初の1個はフォークで食べて、以降は最初に食べた貝殻でつまんで食うのが流儀らしい。ケチ臭く二人でムール貝一皿をシェアして、あとビールを1杯ずつ飲んで退散。なお、自分は日本のラガービールが好みでないので今回ずっとエールばかり飲んでいた。日本ももっとエールを出せ。

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 ちょうどいい時間になったので、駅に向かって電車に乗り込む。これでエディンバラは終わりだ。エディンバラは中心街とニュータウンが分離しているからかまとまりはかなり良く、駅周辺は映画のセットのようで今回最も良かった街のひとつだ。あとは街に高低差があるのが良い。そういえば街の写真を全然貼っていなかったので、ここに載せておく。

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 この日の宿はPenrithという町にあるので、そこまで電車で向かう。途中、Charlileという町で乗り換えが30分ほどあったので、気合で近くの大聖堂まで散歩した。sは割と大聖堂が気に入っていたようだ。時間ギリギリに帰って、次は目的のペンリスへ。乗った電車はもともとマンチェスターの空港行きの電車のはずだったのがストライキのため途中のプレストンで運転打ち切りに変わっていたのだが、ペンリスまでは進めたので問題なし。

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 ペンリスに着いたのは21時。日本だとすっかり夜の時間だが、イギリスは高緯度なので、この時間でもまだ外が昼間のように明るい。小さな町なので、駅前に城がある以外は特に何もない。城跡を眺めて宿に向かった。宿と言っても今回はairbnbなので民泊なのだが、集合住宅の一室だった。キッチンがあったので、イギリスの飯の高さに耐えかねて自炊した。近くのスーパーでパスタとトマト、ベーコン、玉ねぎを買って適当に作ったが、パスタが最小ロットでもかなり多かったので異常な量生成された。味はまあ普通だったと思うが、店で食べる3分の1くらいで食べられたのでまあいいだろう。sはおすすめの激安チルドピザも焼いていたが、オーブンの設定温度をミスって黒焦げになった。洗濯をして寝る。

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○7/4

 この日は山に登る。場所はLake district(湖水地方)、日本のガイドブックによく登場する一大観光地だ。今回登るのはScafell Pikeというイングランドの最高峰(標高978m)になる。

 朝6時に起床。朝飯に残飯などを食べて準備する。洗濯物が全く乾いていなかったので、アイロンで必死に乾かすが焼け石に水。なんか湿った不快な服を着る。部屋の中に湖水地方のバスの時刻表が置かれていたので、ありがたくもらって出発した。

 まずは市街地からKeswick行きのバスに乗る。終点で降りて、1時間の乗り換えの間に少し散歩。いずれにせよ大した町ではないが、ペンリスより少し大きいと思う。バス停の前のスーパーで買い物もした。地図でもないかと思ったが、結構高かったので買うのはやめた。次はSeatoller行きのバスに乗る。ケズィック行きのバスは2階建てで電源もあったのだが、こちらは日本みたいな普通のバスだ。30分あまり乗って、終点で降りる。降りたところはド田舎の牧場で、馬に迎えられた。

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 まずは道路を南下して、登山口に向かう。30分弱歩くとキャンプ場みたいなところがあり、おそらくその先にある動物脱出防止のゲートが登山口になると思われる。Googlemapの地形データによると、ここの標高は100m程度。キャンプ場はそこそこ人がいて、ここまで車で入って入山していそうな人もいた。ゲートをくぐった後しばらくはほぼ道路みたいな道で、横は牧場になっている。誰が管理しているのかは知らないが、ちゃんと柵や石垣を張っていて動物は外に出られないようになっている。羊とか牛とかいろいろいるが、数も多くないしそんなに真面目に経営しているようには見えない。というか、世話はしてるのだろうか。

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 しばらく川沿いに進むと、分岐が出てくる。ここはどちらに行っても目的の山頂には行けるのだが、見えるところに滝があったのと、下りでルート被りが発生する可能性があるのを考慮して、右のルートにした。この先は、見えていた滝を右岸から巻くような形で登っていく。結局、この後滝は見えなかった。巻き終わったところでまた谷に戻る。しばらく歩くと急に池が現れて、奥に目指すピークが見える。……まあ雲に隠れていたが。

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ここから先いくつか分岐が出てくるが、最も山頂にロスなく進めそうな道を選択して進む。ちょこちょこと他の登山客も見かけたが、意外とみんな同じ方向を向かわない。というか、もはや道ですらないどこかよくわからない場所に消えていく人もいる。後述するが、スクランブリングであろう。日本だと方向が登りか下りかだけでだいたい同じ方向にみんな向かっていくので、ちょっと不思議な気分だ。

 山頂の方を見渡してみると、背の高い植物は全くはえておらず、かなり岩っぽい。風と気温で背の高い植物は育たないのだろう。日本だとハイマツが生えたりするが、そういうのもない。持ち込んだら結構育ちそうではあるが…。また、谷はものすごくえぐれて裂け目のような深いゴルジュになっている。沢をやる人間としては興味を持っていたのだが、途中谷を横断する時に上から眺めて見ると、深いだけであまり水量もなく、遡行価値はないという結論になった。沢登りというよりケービングみたいな感じじゃないだろうか。

 最後の登りで完全にガスの中に入り、あたりは真っ白になった。道はよく分からないが、頻繁にケルンがあるのでそれを目印に進む。しばらく山頂への急な登りをこなし、ほぼ12時ちょうどに山頂に到着した。山頂には意外と人がいて、写真撮影をお願いされたりした。

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 山頂は風が襟裳岬のごとく吹き、気温も低いし霧雨状態でえげつなく寒い。早く動きたいところだが、いちど下山の方向性について確認する。下山地点は候補を2か所用意しており、一つは入山地点と同じ場所、もう一つは東に進んだOld Dungeon Ghyllというバス停になる。時間的に間に合いそうなら後者、ダメそうなら前者という計画を立てており、宿で拾ってきた時刻表によるとバスは16時10分。が、改めてGoogle mapで確認してみると15時10分になっていた。どちらが正しいのかよくわからないが、おそらく15時10分でも間に合うだろうと東に進むことにした。

 東の方に向かって下っていくが、尾根が広く視界が効かないため道が分かりにくい。道は石と砂が混じったアルプスの稜線みたいな感じ。ケルンが頻繁にあるので、できるだけ探しつつ進む。鞍部に出たところでようやく雲の下に戻ってきた。振り返って見てみると、やはり山頂周辺だけが盛り上がっていて岩山になっているようだ。この尾根から外れたところにはグレートエンドという無駄にそそられる名前の場所があるが、面倒なのでカット。

 しばらく進んでいくと十字路が出てきて、ここは最短経路の谷沿いルートを選択。ここからは楽勝ムードだと思っていたのだが、意外と長い。だんだん15時10分が怪しくなってきた。紙の時刻表通りならいいのだが、それで違っていたら目も当てられないので頑張って進む。最終的に平地に出てからがやたら長い。もうへとへとになっているが、本当に時間がないので最後は走った。15時5分、なんとか下山。目の前にバスが停まっていた。頑張って走って正解だった。

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 バスは登山客で満員になった。終点のKendalという町まで進む。途中にWindemereという湖水地方の中心の街がありそこで降りても良かったのだが、なんだかんだめんどくさいのでやめてしまった。今思えばこっちで降りておけば良かったなと思うが…。ケンダルは大した町ではないが、駅が丘の上にあるので腹が立った。下山記念にスーパーでアイスでも買おうと思ったらバラ売りがなく、仕方ないので箱アイスを二人で分けた。いろいろ回った感じ、イギリスのそれなりの規模のスーパーではどうもばら売りのアイスを売らないところが多いらしい。

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 ケンダルやウィンダミアはメインの路線から外れた湖水地方のための支線になる。まずは本線のOxenholmeというところに出てマンチェスター行きの電車に乗り、さらに途中Prestonというところで乗り換え。そこから少しして19時30分にLiverpoolの中心、Lime Street駅へ。流石に大きな駅だ。ここで数十分時間があるので、適当に散歩しつつ晩飯にすることにした。何を食うかですったもんだあったが、最終的にケバブをテイクアウトして近くの大聖堂のベンチで食べた。

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 駅に戻り、地下鉄で川の向こうのHamilton Square駅に向かう。川を地下で渡るためかなり地下深いところに駅があるのだが、階段を歩いて改札に出ようとしてえらい目に遭った。10階くらい登ったと思う。階段の出口は普通人が歩くことを想定していないのか、改札すらなかった。ここから20分ほど歩いてバーケンヘッドの埠頭へ。ここからは船だ。

 今回乗るのはStena LineのLiverpool-Belfast航路。22時半発で、21時半がチェックインの締め切りだ。21時過ぎに到着して無事にチェックイン。船に乗った後は座席を確保してうろうろした。船は結構ラグジュアリーで、国内航路なのだが免税店もある。sは紫色の酒をバーで買って甲板で飲んでいた。甲板にはキプロス国旗がはためいていたが、キプロス船籍なのだろうか。積み込みに時間がかかったのか時間になってもなかなか動かず、30分くらい遅れて23時過ぎに出航。マージー川向かいの中心街がきれいだ。しばらくはその辺を散歩したりでかいテレビでウィンブルドンエンゼルス戦を見たりしたが、いい加減眠くなってきたので席に戻ってソファーで横になって寝た。まあそれなりに快適。

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○7/5

 寝ているうちにベルファストに到着。おおむね定時か少し遅れていた気がする。船内放送が全く聞き取れなかったのだが実は徒歩客の移動のバスが整理券の順であることが発覚したため、次のバスになってしまい下船が遅れてしまった。埠頭からは市街地までバスがあるという情報だったのだが、なぜか廃止されており近くまで歩くことに。が、そこのバス停は数分前に行ったところだった。英語力の低さの代償が高くつく。小さい子連れの家族も同じ目に遭っていて、あまりにもかわいそうだった。結局、自分たちは20分くらい歩いて次のバス停で市街地へ。

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 まずは中心街の外れにある壁を見に行くことにする。壁ついてて簡単に最低限知っておいた方が良い情報をまとめておこう。ご存じの通り、北アイルランドは英連邦からの独立を巡って内紛状態となっていた。北アイルランドは英連邦派のプロテスタント住民が多く、少数派のカトリック系住民の一部が独立または統一アイルランドを求めて活動しているという構図になる。壁はこれら住民間のいざこざを避けるために街のあちこちに建設されたもので、98年のベルファスト合意で紛争が一応の鎮静化を見せた以降も増え続け、13年に政府は「23年までに壁を撤去する」と宣言したものの、撤去される気配はない。まあこんな感じだ。ベルリンの壁ならぬ、ベルファストの壁。

 今回訪問したのは市街地の西の方にあるCupar Way沿いに設置されている壁。おそらくもっとも有名な壁と思われる。北側のプロテスタント住民側の地区から5mくらいありそうな壁を眺めてみると、一面のグラフィティの上から小さい字で平和を訴える文言が多数。ここから夜間は閉まるらしいゲートを抜けて、カトリック系住民の地区の方の壁を見てみると、こちらは世界中で様々な運動を行っている地域や指導者との連帯を呼び掛けるアートが多い。平和をと呼びかけるのはいつも現状で得をしている抑圧する側であるのがよく分かる。お互い地区にはユニオンジャック/アイルランド国旗を掲げており、町の雰囲気以上に分断は深刻な印象だ。タクシーツアーか何かで運転手が観光客に説明している様子がいろいろなところで見られた。

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 そのへんにあったGreggsというチェーンのカフェ併設パン屋で朝食にした。レストランと違い、こういうファストフードっぽいところはおおむね安い。この後は適当にベルファストの市街地を回り、無料だった町の庁舎の展示を見るなどした。庁舎は街の歴史が詳細に記されており見応えがある。ちなみに、ベルファストタイタニックが建造された街で、ドックのあったところに角川武蔵野ミュージアムみたいな建物の博物館があって観光の目玉になっている。ちょうどタイタニックを見に行った潜水艦が帰ってこなかった事件があったこともあり興味があったのだが、街の外れなのとめちゃくちゃ入場料が高いのでやめておいた。

 次はダブリンに向かう予定だ。バスに乗ろうとバスセンターに向かうが、次のバスは満員で次は1時間後だと言われた。電車で行く手もあるのだが、バスの方が安いし本数も多い。1時間でだらだらしてからバスに乗り、北アイルランドとはお別れ。国境は気付かぬままに通り過ぎ、気付けば路上の標識からヤードポンド法が廃止されていた。

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 アイルランドEU圏内、通貨はユーロで当然二人とも持っていないが、特に両替はせずにキャッシュレス決済だけで乗り切った。日本ももっとキャッシュレスを普及させて欲しい。バーコード決済はしょうもないのでやめて欲しいところだが。ベルファストは曇り空だったが、こちらはすっきりした空模様だ。ダブリンの街は近代的で、道が広く建物があまり高くないので開放感がある。広々した道をトラムが走っていて美しい。ベトナム以来のサークルKを発見してテンションが上がったりもした。もっとも実はイギリスにも最近再進出したらしいが…。路地に入るとバーがたくさんあり、かなり賑わっていてみんな昼から飲んでいる。本当に平日なのだろうか。

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 適当にうろうろしつつ、ダブリン城に向かう。と、城のすぐそばにChester Beatty Library という無料の図書館があったので寄ってみるが、ここの展示は非常に良かった。後で行くナショナルギャラリーよりも良かったと思う。Libraryではあるが、図書館より集成館とかそういう訳を附すのが良いかもしれない。展示は西洋、イスラム、東洋に分かれ、広義の書籍が多いが北斎の浮世絵などもある。コーランの巨大な写本やパピルスの文書などが出色か。駆け足で見たのに1時間くらいはいたと思う。

 改めてダブリン城へ。エディンバラと違って街に溶け込んでいて、どこが城なのかよく分からない。中に入ってみると、内装はもはや城ではなく完全に宮殿だった。まあしかし今回の旅行でまだ宮殿は一度も行ってない(この後も行かない)し、これはこれでいいだろう。

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 少し時間を潰してから、17時30分に予約していたでトリニティカレッジへ。ここは世界一美しい本とされるケルズの書を収蔵していることで有名で自分はここしかダブリンの観光地を知らなかった。エディンバラの反省もあってちゃんとオンラインで予約していたが、実際枠はすべて埋まっていたので反省が生かされている。基本的に少数精鋭の至宝展示のため狭い上に、みんな同じ時間に入場するので中はかなり混雑していた。ケルズの書は確かにきれいではあるが、正直そこまで期待して見るほどのもんではない。ガラスケースの中で1ページしか見れないし。そこを抜けたあとにはLong Roomというばかでかい図書館があるのだが、こちらの方が印象深い。また、ここにはもう一つの至宝である最古のアイリッシュハープも展示されている。sは今回観光した場所の中でここが最も良かったと述べた。

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 この日はまた船移動で、20時半発でイギリスに戻る。時間が余っていたので、ナショナルギャラリーで時間を潰してから近くのバーで飲んだ。アテに頼んだクラムチャウダーアイルランド名物のソーダブレッドが付いていたのだが、完全に黒糖パンの味だった。どうでもいいが、自分はずっとIPAのIはアイリッシュだと信じて疑っていなかったのだが、正しくはインディアであることをここで知った。

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 店を出てバスで埠頭に向かおうとするが、バスが定刻の10分後になっても来ない。船を逃すわけにはいかないので、仕方なくタクシーで向かった。向かう途中でそれっぽいバスを見かけたので、単に遅れていただけだろう。そんなに距離はなかったおかげでふたりで2000円くらい。運転手の黒人のにーちゃんは大音量で音楽を鳴らしていた。

 今回の船もStena Lineで船も同型だったので、あまり面白みはない。実はほぼ同じ時刻に横の埠頭からIrish Ferriesが同航路で出ていることに後から気づいたので、そちらに乗っても良かったかもしれないが…。今回はせっかくなのでここのレストランで夕食にした。自分はスウェーデンミートボール、sはフィッシュアンドチップス再び。できあいの料理ではあるが、ベリー系のソースが合ってなかなかうまい。付け合わせのマッシュポテトの量が多く、かなり腹一杯になった。船内ではあるが、値段はその辺のレストランと変わらないところも良い。今回の航路は3時間と短いので、ちょっとだけ寝る。

 時刻は23時30分、ようやくしっかり眠れそうな気分になったところで起こされる。到着したのはアングルシー島ののHolyheadという町。ここはウェールズの領域なので、これで連合王国を構成する4か国を全て踏んだことになる。船を降りるとウェールズ語の看板に迎えられた。港から10分ほど歩いて宿へ。この日もAirbnbなのだが、勝手に鍵を開けるタイプではなかったので、住民を呼び出すことになってしまい少々申し訳ない。シャワーを浴びてさっさと就寝。

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○7/6

 ここまで海外旅行とは思えない過密スケジュールで来ているが、なんとこの日も登山である。正気か?

  今日登るのはウェールズ最高峰のSnowdonという山。ウェールズ語だとYr Wyddfaという名前だが、どう発音するのかはよく分からない。ウェールズ最高峰で、イギリス諸島では4番目になるらしい。標高1085m、4番目とは言っても所詮その程度だ。…とここまでSnowdonの話をしたが、今回のメインはこの山ではなくて、途中のCrib Gochというピークになる。

 さて、少し解説を挟む。イギリスにはScramblingという登山形態がある。あまり日本では馴染みがないが、漢字にするなら歩登攀が適切か。要するに、三つ道具を用いない範疇に属するクライミングだと思えばよい。日本だとそもそもルート外を歩かれる行為があまり行われないこと、ルート外は植物が茂っている関係であまりこういう行為をできる場所がないので概念として浸透しないものと思うが、欧米では結構メジャーなようである。とはいえ、沢登りも一定の範囲まではスクランブリングの範疇に含めてよいだろう。グレード1から3まであり、3が一番難しい。3だと懸垂下降でもはやザイル不可避なところも多いようだが…。普通に山に登るばかりなのも面白くないので、ちょっとくらいこういうやる気のある登山をしてやろうというわけである。

 今回登るクリブゴッホは非常に有名なルートのようで、scramblingで検索するとよく名前を見かけることになる。グレードも1で、ここから始める人も多いようだ。今回は初めてで難易度もよくわからないので、まあこれくらいなら大丈夫やろという考えでここを選択した。

 話を戻そう。この日は余裕のある行程を取ったので、起床は7時前。ホリーヘッドの駅に行って、そこから電車で入山地点へのバスが出ているBangorへ。途中、非常に長い駅名地名として有名なLlanfair­pwllgwyngyll­gogery­chwyrn­drobwll­llan­tysilio­gogo­gochを通る。駅名標にもこの名前が書かれているが、これは通称名で駅名としてはLlanfairpwllが正しい。どうでもいい補足を入れておくと、ウェールズ語は一見子音だらけでどう発音するのか全くわからないが、実はウェールズ語においてはwとyも母音である。

 バンガーからはCorwen行きのバスに乗る。バスの運転手にいろいろ察されたのか、6ポンドの一日券を勧められたので素直に買っておく。途中、St Curig's Churchというところで降りて、すぐ近くのLlugwy Terraceというバス停でCaenarfon行きのバスに乗り継いでPen-y-pass YHAというバス停で降りる。ここが今回の入山地点で、自分達含め多くの客がここで降りた。おそらくこの2回で一日券の元は既に取れていると思われる。降りたところにはビジターセンターみたいな建物があったが、まだ開いておらず入れなかった。9時40分ごろ入山。

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 Crib Gochの分岐までは、一般的なSnowdon登山ルートであるPig Trackという道と共通。よってこちらはたくさん登山者がいる。今回の入山地点のあるPen-y-passは峠の上にあり、Googlemapの地形図によると標高350m程度あるので、最終的な標高こそ前回より高い実際に登る高さは少ない。もっとも、入山地点の標高は今調べて知ったのだが…。道は前回同様非常によく整備されており、簡単。最初にいきなり尾根に乗るのでちょっとしんどいが、その尾根に乗ると眼下に結構きれいな湖が見える。道中にも湖を見たし、こっちの方がよっぽど湖水地方感がある。そしてここでCrib Gochの分岐であることを示す石碑が登場(10:10)。

 Crib Gochのルートに入って、なぜか少し進んでからウェールズ語と英語の併記された注意書きの看板が登場する。Extreamの文字だけ見えたがそれ以上読まずスルーした。今改めて読んでみると、experienced and very fit mountaineers with good technical skillsなどと書かれているが、英語圏の人間はすぐwonderfulとかfantasticとか誇大な表現を用いるので、まあ大したレベルは求めていないと思われる。その下にはpotential use of ropesとも書かれているが、下調べで懸垂下降が発生する可能性は皆無と見たので持ってきていない(あと単純に重い)。

 この看板を過ぎてからは岩場になり、確かにルートの類は一切なくなる。ただし入山する人が多いためか岩がかなり摩耗しているので、なんとなくどこを進むべきかは分かる。適当に進んでいくとちょっと傾斜の強い場所が出てきて、素人感ある3人組が戸惑っていた。こいつら大丈夫かなと思いつつ、横を抜けてそのまま登っていく。もっともこの場所は結構難しく、おそらくRFミスだろう。我々はそれにつられて難しい場所を登ってしまった感がある。ここが一番難しかったが、難易度的には北鎌の槍の直下とかせいぜいそれくらい。

 この先は基本的に容易な登攀というかほぼ普通の岩場歩きになり、下から見るほどのいかつさはない。どこを登っても大して難易度が変わらない気がするので、RF力もあまり必要ないと思われる。11時ちょうどくらいにあっさりと山頂に到着。雲が出てきて前方に見えるはずのSnowdonの山頂は隠れてしまったが、進む先には確かに切り立った尾根があり、なかなかやばそうな見た目をしている。振り返ってみると、さっき困っていた3人組もだいぶ後ろに見えたので一安心。

 ここから先が核心のナイフリッジとなる。見た目には相当いかついが、実際歩いてみるとそう簡単に転落するようなものではない。…のだが、ここもまた風が襟裳岬状態で、それも横風なのでめちゃくちゃ怖い。自分はナイフリッジが一番苦手なので終始ビビっていたが、sは余裕そうにすたすた進んでいた。実際怖がっていると動きが悪くなり危険なので、自信をもって進むのが肝心である。

 途中2つほど小ピークがありここの登攀も核心とされているようだが、あまりよく覚えていない。巻いた気もするし、直登した気もする。いずれにせよ大したことはなかったと思うが…。登っているうちにだんだん雲が動いて晴れてきた。Snowdonのピークにかかる雲も取れ、遠くにはアイリッシュ海も見えてとても良い。

 ナイフリッジを抜けるとその後は平和な道になり、多少登るとスノードンの山頂から北に登る尾根のピークに合流。ここからすぐ北で元のPig Trackやほかのコースと合流し、人だらけになった。おそらくLanberisの街から登ってくる人が多いと思われる。ランべリスからは登山鉄道も出ていて、その軌道のすぐ横を歩くことになる。そうこうしているうちに12時半に山頂に到着。いつのまにか雲がかかっており、視界は無であった。2敗目。

 帰りはせっかくだし登山鉄道に乗ろうと思っていたのだが、駅に行ってみると全席要予約であることが判明した。下調べでは登りのみ予約必須で帰りはなくても何とかなるという情報だったのだが…。よく考えたらそんなはずはないのだが(登ってきた人が下りれなくなるので)。実は前日あたりから疲労でだいぶ判断力が低下しており、こういうポンコツ案件をたびたび発生させている。

 鉄道に乗れないとなると仕方ないので、どこかに歩いて下山することになる。候補はいくつかあったが、一番早そうかつバスの接続の良いSnowdon Rangerというところに下ることにした。途中までは登って来た北の尾根たどり、コルのあたりから外れて西のだだっ広い尾根に入る。歩きやすい道をひたすら下って14時に下山。全体のコースタイム4時間あまりで楽勝だった。

 下山地点のすぐそばにスノードンレンジャーというユースホステルがあり、ルート名もここから来ているようだ。バスは1時間に1本あり、時間はちゃんと調べていたので次のバスは10分後。近くに存在を認知していない駅があったので見に行ってみると、Welsh Highland Railwayという保存鉄道で、観光SLが一日何本か走っているらしい。最初駅の横の人の家の庭に入り込みそうになってこっちじゃねえよと怒られた。

 やがて来たバスでCaenarfonに向かう。このバスも1日券が使えた。15分ほどで到着。この町は世界遺産の城の街で、当然観光していく。城は非常に威圧感があり、値段も10ポンドちょっとと大都市の観光地に比べれば安めな上になぜか立派なガイド本までくれる。4層くらいの構造になっているのだが複雑でたびたび迷子になり、全部回ろうと思うと1時間くらい歩いたり展示を見たりでへとへとになった。

 城を見ているうちに昼飯の時間を過ぎてしまったが、自分は特に腹が減っていなかったのでsだけ近くのケバブ屋に入った。自分はIcelandという冷凍食品が売りのスーパーに入ってアイスを買おうとしたら例によって箱しかなかったので、sと分ける前提で買ったものの1本しかいらないと言われ、ひとりで5本くらい食べる羽目になった。バスでバンガーに戻る。

 下山がこんなに早くなると思っていなかったので、この日の宿はバンガーに取っていた。sはせっかくイギリスまで来ているんだから捨てて別のところを取ればええやんと言ってくれたが、さらに進むならとおぼろげに考えていた予定が本当に実行可能か判断するのに時間が必要だったのと、バス1日券の存在が邪魔をしたためやめておいた。そんなわけで、付近を観光。最初は北のビューマリスというところにあるこれまた世界遺産の城に行こうとしたのだが、乗っていたバスの延着&乗り換え先の早着により乗り換えに失敗した。これ自体は知っていたのだが、イギリスの公共交通は定刻を待たずに発車することがあるので気を付ける必要がある。仕方ないので次のバスで途中まで行こうとしたのだが、今度はあろうことか運転手に無視された(合図していたにもかかわらず)。こればかりは許せん。

 そんなこんなでだいぶ時間をロスしつつ、とりあえずアングルシー島に渡ったところにあるMenai Bridgeへ。エディンバラに続いてまた橋なのだが、この橋はかつて世界最長の吊り橋だった。今はもちろん明石海峡大橋…ではなく昨年ボスポラス海峡のチャナッカレ海峡大橋に抜かされた。また、この辺りの歩いて渡れる島にティシリオ教会があり、そこにも寄っていく。朝通ったLlanfair­pwllgwyngyll­gogery­chwyrn­drobwll­llan­tysilio­gogo­gochは「赤い洞窟の聖ティシリオ教会のそばの激しい渦巻きの近くの白いハシバミの森の泉のほとりにある聖マリア教会」という意味(by wiki)なのだが、­そのティシリオ教会のことと思われる(llan­-tysilioがティシリオ教会)。その割にはこじんまりした教会だが…。丘の上にはケルト十字もあった。ケルト十字はケルトの土着宗教(アニミズム)とカトリックが習合してできたもので、アングルシー島がローマに滅ぼされる前ケルトの宗教(ドルイド)の拠点だったという歴史もある。意外と見られるところは少ない。

 時間的にビューマリス城が閉まるのは分かっていたが、やることもないしバスはタダだしで、一応見に行くことにした。案の定閉まっていたので、小窓から頑張って中を眺める。見た感じカナーフォンの方が立派そうだしまあいいだろう。こっちはこっちで均整が取れているし堀もあるのでお好みだと思う。海岸に出てみたらまた襟裳岬だったので速攻で撤退し、バスで帰って宿(またAirbnb)へ。その後中華料理屋で予定している山を全部完遂した記念打ち上げをした。この店は龍門に匹敵するくらいうまく、しかもメニューは龍門より多い。当然ながら龍門より値段はだいぶ高いが…。今回のイギリス滞在中ダントツでうまかった。

 宿に戻って就寝。正直この日までに絶対どこかでミスって1日くらい行程が遅れると思っていたので、その後の予定は何も考えていなかった。逆にここが予定通り進んだことでもう終わった感が漂い始めていたのでだいぶ気は抜けている。これ以降は完全に適当で出たとこ勝負だ。

 

〇7/7

 7時くらいに起床した。この日はロンドンに向かうので、道中のチェスターで観光することに。そこまで大きな街でもないが、それだけにある程度まとまりがあって整った感を受ける。小京都みたいな感じなんだろうか。相変わらず大聖堂が良いのだが、これまで毎回外観だけだったのが今回初めて中に入れた。自分はステンドグラスを眺めるのが割と好きなので中に入れいるのは嬉しい。

 時間があったので、町の中心からすぐのところにある現役では世界最古のチェスター競馬場にも行く。開催日でないので無人だったのだが、うろうろしていたらそのへんにいたスタッフが写真撮ってやるよとパドックに入れてくれた。地味にここで撮影されたものが今回唯一二人とも映っている写真になった。そういうのは山で撮っておけ。

 例によって腹が減らないので昼飯は食べず、電車で一気にロンドンに帰ってきた。土曜日ぶりのユーストン。旅行のルートは一筆であればあるほど良いと考えるが、残念ながら最後の方で被ってしまった。

 適当に中心部に行く。トラファルガー広場で地下鉄を降りたが、着いてから土曜にも行ったのを思い出した。そこからは歩きでビッグベンとかそのへんのロンドン観光でみんな行く場所を歩く。やつらはいずれも入場料がバカ高い上にえらい量の人がいるので、どこにも入らなかった。

 ある程度いい時間になったので、地下鉄でウィンブルドンに移動する。当然全英の大会期間中なのだが、ウィンブルドンは四大大会で唯一当日券があるのだ。試合は1日中やっているので、人が抜ければその分次の人が入れるシステムになっている。それも17時以降はさらにお安くなるのでそれを狙おうというわけである。なお、最寄りはウィンブルドン駅ではなくサウスフィールド駅だ。

 駅から人ごみに従って歩き17時前に列に到着したのだが、なんか異常に並んでいる。スチュワードによると、この日は意味わからんくらい入場者が多く、(普通はなくならない)整理券が午前中になくなるほどだったらしい。おそらく、センターコートの最終試合がジョコーワウリンカだったためだと思われる。並んでも多分入れんと思うと言われつつも別にやりたいこともなかったので脳死で並んだが、結局入れず。こんなことは今まで初めでだぜと言っている人もいたので、おそらく本当に異常事態だったのだろう。コロナ後久々に方式がこの形に戻ったのだが、来年以降もカオスなことになるのかもしれない。そもそも今回は日程的に観戦できる候補が3回戦初日のこの日しかなくてちょっときついかもとは思っていたのだが、素直に1回戦の日に行くのが良いと思う。

 結局追い返されたので、外から会場を眺めつつウィンブルドンの駅に撤収。とりあえず晩飯にすることにしたが、あまりいいのがなくさんざん悩んだ挙句韓国料理屋で晩飯にした。なんか味噌汁みたいな煮込み料理を食ったのだが、よく覚えていない。その後電車でロンドン郊外の街の宿に向かった。なんとこの日はついにホテル泊である。というのも安宿と値段が大して変わらなかったので。異様に予約サイトの口コミが悪くて楽しみだったのだが、入ってみると普通にきれいかつ結構ラグジュアリーなホテルだった。就寝。

 

〇7/8~

 ついに最終日。この日は20時前ヒースローの飛行機で帰るので、それまでロンドンで観光するだけだ。

 判断力が完全に限界だったので、いきなり駅で逆方向の電車に乗ったりした。とはいえ検札も来なかったので、なんとか折り返しに成功。ウォータールーからモノレール的なやつでグリニッジへ。まずは入場無料の海洋博物館をしばし見学。でかいターナーの絵が特別室に飾ってあるのだが、自分たち以外誰も見ていなかった。展示自体はまあ普通か。そのあとグリニッジ天文台にも行くが、中には入らず(有料なので)。天文台があるだけあってこの辺りは丘になっており、ロンドン市街が見渡せる。看板にロンドン1の絶景とか書いてあったような気もするが、昔はともかく今はさすがに過大評価。

 実はここまで食べてきたイギリスの料理が思ったほどまずくなくて拍子抜けしていた。そこで、最後に一発本当にまずそうなやつを食ってやろうと思い昼飯は伝統的ロンドン料理が食える食堂に入った。グリニッジという港湾地区は、ちょうどそういう雰囲気のある場所だ。頼んだのはイギリスの労働者料理としておなじみミートパイと、かの悪名高きウナギのゼリー寄せ。どちらもまずそうな見た目で特にウナギは本当に考えた人間の正気を疑うのだが、実際のところ味は思ったほど悪くなかった。確かになんとなく生臭さというか違和感はあるのだが、元がウナギだけあって濃厚な出汁の味がして日本人との相性は悪くないと思われる。まあ絶対ウナギの無駄遣いだと思うが…。ミートパイはぱっと見グレイビーソースがかかっていておいしそうなのだが、見た目に反して異常に味が薄かった。これは確かに自分が思うイギリス料理だ。sはふだんから職場の昼飯でこういうのをよく食っているらしい。かわいそうに。

 午後は最後の観光ということでキューガーデンに行った。ここはsが唯一イギリスで興味があるところとして名前が挙がったところで、自分も行きたいと思っていたのでちょうどよかった。かつヒースローにも近い。ここの敷地はとても広いが、温室の数はそれほど多くない。sにぱっと見違いのよく分からないイネ科植物や隅っこにひっそり植えられているヤムの解説を受ける。sはこの施設について全体的には見せ方が良くなく京都植物園以下だと評した。

 そうこうしているうちに16時半くらいになったので撤収。途中のHammarsmithという駅でsと別れて一路ヒースローへ。17時くらいに到着した。空港の近くで暇つぶしになるものは何もないので、ちょっと早いが保安検査を通過。2時間くらいあるのでひたすらうろうろして免税店で職場への土産を購入した。免税店はどこもbuy2take1free、つまりふたつ買うとひとつ無料というシステムになっており、自分はふたつあれば十分なのに無意味に3つ買う羽目になり腹が立つ。念のため空港には多少早めに着いておこうとさっさと来たのだが、キューガーデンの近くのスーパーで買い物してから来ればよかったか。

 帰りの飛行機はカタール航空。まずはドーハへ。金のあるところだけあって機内コンテンツも充実しているし、飲み物も異常に充実している。が、機内食はいまいちだと思う。謎のスワジランドだったかジンバブエだったかの紹介動画を見たりとか謎のアラブ音楽を聴いたりとかで適当に過ごす。ドーハではトランジットがないらしく、荷物検査なしでいきなりターミナルに放り出されたので、本当にこれで大丈夫なのかと不安になった。ここは3時間ほど乗り継ぎがあったが、これまたそのへんをうろうろして時間を潰す。その後成田行きに搭乗、だいぶ周りに日本人が増える。帰りの機内では映画ベルファストを見た。過去の回想みたいな映画なのであまりこの前見た景色が出てこないのは残念だったが、こうやって行った後に見るのはまあなかなか良かった。ただし字幕が中国語と英語しかなくあまり内容は理解できず。

 羽田には9日の23時30分に到着した。入国するころにはもう月曜日になっており、家に帰る電車はもうない。仕方ないのでそのへんの床に銀マを敷いて寝る。始発で帰宅し、そのまま月曜日はテレワーク。ふざけやがって。労働が終わってから爆睡した。おわり。

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 とりあえずの目標であった『イギリスにもう二度と行かなくていいくらい観光する』はおおむね達成した気分でいる。実質滞在7日間で4か国+アイルランドすべて訪問して山にも2回登ったんだから、まあよくやった方だろう。ここをこうしていればもっとやれたという反省点はあるが、これでもたいがい疲弊したし、もはや旅行の域を越えて修行に近かったという説もある。iPhoneのヘルスケアアプリによると、9日間の歩行距離は174キロらしい。飛行機に丸2日乗っていたことを思えば1日平均25キロ歩いていることになり、疲弊するのも当然か。

 限られた日程の中でここまでやれたのは、間違いなく下調べを入念にしておいたおかげだ。レンタカーを使わない条件では、公共交通で移動可能な範囲を見積もるのがかなり重要である。夜行列車やフェリーは時間を移動に変換できる優秀な手段だし、今回は利用しなかったがヨーロッパはLCCも多いのでそちらを活用するのも手だ。また、特に山の周辺ではバス同士の乗り継ぎが発生するなど、下調べしておかないと詰むというか、そもそも行けるのかどうかわからないということになりかねない。イギリスのはバス日本と比べGooglemapの時刻表がかなり優秀なので、活用すると良い。今回は1週間くらい前からはひたすら時刻表とにらめっこする日々で、特に湖水地方の日の日程が相当シビアだったのだが、これくらいはギリギリ行けるだろうと思って組んだ予定がその通りハマったのはかなり気分が良い。まあ下調べとは言っても理論上可能か調べただけで実際に予約とかはしていないので、現地でも移動中はひたすら調べ続ける感じだったが。おかげでGooglemapだけで楽天モバイルの無料ローミングの2GBを越えて、料金の上がる3GB手前まで使うことになってしまった。

 反省点としては、先述のように答え合わせをすればまだやれた部分があったことだ。6日はバンガーで宿泊したが、そこでそこで宿を無視してチェスターから南下しておけば、翌日ウェールズ南部を回って一筆書きでロンドンに帰れたことだろう。正直ウェールズで山に登った後のことをほとんど考えていなかったのと、疲労でうやむやになったのでここはもったいない。さらに大きな問題があるとすると、ベトナムに寄ったのがそもそもの誤りである。ベトナムは一切悪くないのだが、多少の金銭的な目的のために滞在を1日減らすのは得策ではない。事実、この1日があればイギリス最高峰であるBen Nevisにも登り、いわゆるThree peak challenge(スコットランドイングランドウェールズの最高峰であるBen Nevis、Scaffel Pike、Snowdonに全て登ることをそう言う)を完遂する日程が組めたのだ。このことに気付いたのは飛行機の予約後、行く数日前だったので相当ミスったなと思った。また、実は今回の行程も実は逆順の方が組みやすい。初日ロンドンで油を売っている時間にウェールズに進んだ方が、湖水地方のギリギリ行程を回避できるのだ。これも、夜行列車を予約してから気づいた。先に抑えてしまった行程がネックになってしまうと非常に悔しいのだが、このあたりは早く予約しないとどんどん埋まっていくという問題もあるのでそう簡単な話でもない。

 今振り返ると、理論上組める最強の行程はこんな感じだ。

7/1ロンドンに移動、その後ウェールズに移動し観光

7/2Crib Gochに登り、船でダブリンに向かいアイルランド観光。

7/3ベルファストに移動、北アイルランド観光し船でリバプール

7/4湖水地方に移動、Scaffel Pikeに登って観光、そのへん泊

7/5エディンバラに移動、観光ののちフォートウィリアムに移動

7/6Ben Nevis登山、その後カレドニアンスリーパーでロンドンへ

7/7ロンドンや周辺観光、ウィンブルドンで列形成し野宿

7/8ウィンブルドン観戦、帰国

 これを予定段階で組むのはまあ無理があるが、これが理想形だとしてその7割くらいを実現できていると思えば充分だろう。

 せっかくなので、イギリスの山についてもまとめておこう。イギリスの山は日本よりだいぶ標高が低いが、標高の割に景色は非常に良い。高い木が全然生えていないからだ。また、羊など動物がたくさんいるのも良いところである。そういう意味では、コスパの良い登山ができる。道に関してはナショナルトラストか何かが相当整備しているため、日本の登山道より広く登りやすいことが多いと思う。スクランブリングについて言えば、今回のクリブゴッホの場合、北アの点線ルートが普通に行けるくらいの実力があれば十分だろう。海外登山であるリスクを考慮すると念のためもう少し上積みが欲しいところかもしれないが。岩場の練習にもなるのでジャンダルムとかバリエーションの岩場に行っておくといいとわれる。鎖とかはないので、全て自分の力で登る必要がある。なお、沢登りの余地についてはかなりあるように感じた。むこうでもGhill Crimbingというのがあるようだ。日本の沢登りとどの程度違うのかはよく分からないが、登るだけの価値のある渓流があるのだろう。

 注意点として、防寒着については必須と思って良い。どの山に登った時も、風は本当に強かった。ガスの中だと本当に寒いので、手袋も持ってきて良いと思う。稜線を歩くときなどあおられないよう要注意。保険は入るのをすっかり忘れていたが、当然入っておくべきだろう。海外で使えるかなど、よく調べておく必要がある。

 費用面について。今回は飛行機が往復18万程度、それ以外が10万円程度で合わせて30万程度の出費になった。飛行機に関してはヨーロッパがハイシーズンに入りかけていることもあって、この値段になるのも仕方はない。もう少し早く予約すればもう少しマシだったかもしれないが…。それ以外は交通費と食費、あとは観光にかかる費用と宿代だ。宿に関しては4泊しかしていないので割と抑えられているが、交通費はそれなりにかかる。一番高いのは食費だ。贅沢しているわけでもないのに店に行くと毎食3000円くらい飛んでいく。小麦粉製品と果物は安いのでたくさん食べた。特にいちごやりんご、クッキーなどのお菓子は日本より安い。イギリスは北欧と西欧の間くらいの物価だろうか、やはりそれなりに高い。特に行った時期のポンドのレートが180円くらいと最悪の時期だったのもある。こればかりはどうしようもないのだが…。

 まあこんなところか。一度行くとやり残したことが見えてきてまた行かなければと思うのだが、冷静になるともう二度とイギリスには行かなくて良いような気もする。まあもし行くのなら、次はベンネビスも登ってヘブリディーズとかスカイ島とかもっと北の方に足を伸ばしたいところ。あと個人的にはスヌーカーを見たい。まあこれは香港とかでいいか。まあしばらくヨーロッパはもういいだろう。なんだかんだ相手のしゃべっていることが理解できないのが自分に腹が立ってくるし、日本を観光している方がそういう意味では精神衛生上よい。海外に出るなら中国(台湾でも)が良いが、中国語を実用上最低限レベルになるまで勉強したいところだ。

 最後になんとなく今回Googlemapに記録されたタイムラインを公開しておく。ほぼ無加工なので誤りが大量にあると思うが、大まかには合っていそうなので気にしない。