今回は2024年度に入って10月の北海道までに食べた品種たちをレビューする。
○きざし(ガラ×ふじ)
実は初めて聞いた品種。岩手県で開発され、91年に登録された早生品種。つがるよりもさらにもう少し早い。種子親がガラなのはさんさも同じで、岩手では早生品種開発のため積極的に掛け合わされたのだろうか。丸っこい形で大きさは200g程度と小さめ。
今回は盛岡の駅近くにある賢治館なるところで買った。たしか山下果樹園とか書かれていた気がする。B品で、7個398円だった。
最初の1個目を食べたときはかなりニュージーランドのりんごっぽいなと感じたのだが、2個目は割とふじっぽい感じだった。とはいえ総合すると全体的な食感はロイヤルガラやジャズのようなNZりんごっぽいクリスピーさがあり、味の方は両者の中間という感じがする。そもそも輸入物が盛んな時期なのでそんなに珍しさがある味でもないが、早生としては良い品種だと思う。
写真は市内の北上川沿いにて撮影。
〇美果(バーガンディ×?)
岩手県北与園のオリジナル品種。この品種については名前も聞いたことがなかったが、この手の農園オリジナル品種まで把握するのは困難だ。ということで調べてもあまり出てこない。購入店で書いていた情報によると、種子親はバーガンディらしい。バーガンディは食べたことがないが、いわゆるクッキングアップルだ。ということで酸味の強い品種である。大きさは店に並んでいるのを見た感じ、350gくらいとそれなりのサイズ。
こちらは盛岡市のファーマーズマーケットで購入した。酸味の強い品種として書かれていたが、食べてみるとそこまで思い切り強いということはない。たしかに他の品種よりは強めだが、グラニースミスとかと比べると大したことはない。生食用としても結構良いと思う。果肉は緻密で食感は少々重め。つがるよりもう少し重いだろうか。甘みもあり濃厚な味なので、好きな人は好きだと思う。
写真は四十四田ダムにて撮影。
〇紅将軍(やたかの枝変わり)
シリーズ早生ふじ。はっきり言って区別はつかない。これまた早生ふじの一角であるやたかのさらに枝変わり。山形県で開発された品種なので生産量も山形県が多く、次いで北海道でこの二県で生産量のほとんどを占めている様子。
今回は岩見沢市毛陽のりんご祭りで購入した。深川や滝川と並んで空知は結構りんごの生産量が多いが、岩見沢もその一角で岩見沢のりんごはこの辺りで生産されている。まあ早生ふじなのでそのあたりであまり違いは分からないが、しかし当然味は良い。でもちょっと後述するほのかとは違う感じがあり、どちらかというとほのかの方がふじに近いと思う。まあ基本的な傾向としては、歯ごたえがあり、甘みが強めで甘酸適和の濃厚な味。やはりふじはりんごの王道だなと改めて思う。
写真は羊蹄山にて撮影。
〇ほのか(ひろさきふじの枝変わり)
これまたシリーズ早生ふじ。こちらはこれまた別の早生ふじであるひろさきふじの枝変わり。早生ふじのバリエーションが多過ぎる。特徴としては着色が良く、大玉傾向らしい。
同じく壮瞥町の農園で購入。ばら売りで1個250円だった。大きさは400gあまりありそうな大玉。切ってみると蜜がよく入っており、味の方は完全にふじそのものだった。食感も変わらないので本当に判断がつかない。しかしふじは頑張らないとここまで大きくはならないと思うので、そこで判別できるか。
…と、先ほど蜜がよく入っておりと書いたのだが、これはほのかの特徴とまったく一致しない。りんご大学などのページにもほのかに蜜は入らないと書かれている。これはどういうことなのだろうか。シールが貼ってあったので、自分が取り違えたということはないだろう。となると農園側の取り違えか、さらに変異したか…。当時売っていた品種で取り違える可能性があるとしたら昂林あたりだが、もはや自分には判別できないのでこれはどうしようもない。まあそんな感じで疑問符は付くのだが、とりあえずどこにも誤りはなかったと信じてこのままレビューしておく。
写真は購入地付近にて撮影。まな板が汚くて申し訳ないが、家で撮影した断面の写真も載せておく。
〇静香(ゴールデンデリシャス×印度)
山形県の天香園で開発された品種。書いていなかったが、紅将軍ややたかもここで育成された品種である。親の組み合わせからもわかる通り割と古く、品種登録は1986年。ぱっと見王林っぽい見た目だが、王林ほどは肩が張っていない印象だ。
これまた壮瞥市の農園で購入した。立派なサイズのものが3個1000円だったはず。ちょうど今日から取りはじめたらしい。かなり硬く、甘味も酸味も強めの濃厚な味だった。親の組み合わせからするとちょっと意外ではある。果肉が締まっていて、噛んでも口の中に小さな塊が残り続けるような感じだ。静香は甘味強く酸味が弱い品種とされているが、多少早取りなのだろう。晩生なので、10月中頃の北海道ではまだ早いはずだ。しかし特に未熟な感じはせず、これはこれでおいしい。完熟果もぜひ食べてみたいところである。
○旭(不明×不明)
実は2016年にヨーロッパで買って食べたことがあるのだが、当時このブログはなかったので初めてレビューする。旭、別名(というか英名)マッキントッシュ。Macのマッキントッシュもこれに由来する、欧米では盛んに作られている品種だ。原産はカナダで、農園でそのへんに生えていた苗木が発見されたのが1811年と非常に古い。ということで日本でも最初期から入っている品種なのだが、ほとんどの産地ではつがるに取って代わられた一方で、耐寒性が非常に良いのでまだ北海道ではそこそこ作られている。親の組み合わせはいくつか推測されている様子。
これも壮瞥の農園で購入。他の果物もそうだが、耐寒性の強い品種はあまり開発されないのか、東北以北では昔の品種が残り続けている印象がある。まあ、気候変動に疑いの余地のない時代に耐寒性に優れた品種を今から作っても仕方ないところはあると思う。この品種の特徴はなんと言っても酸味を感じる強い香りと白い果肉。香りは何日か置いておくとかなり強くなった。味の方は酸味がやや強めの昔ながらの品種という感じ。香りの強さも相まって素朴な感じがする。あとはりんごに対して普通使われない表現だが、皮離れが良い。皮自体も薄く、噛んでいると皮だけすっと離れていく感じがある。だからどうしたという話ではあるが。軟らかめで若干紛質なのが残念だが、個人的には割と好きな品種。
写真は森と木の里センターにて撮影。
〇ひめかみ(ふじ×紅玉)
名前の通り、岩手県で育成された品種。開発したのは農研機構だ。1985年に品種登録されている。着色がよく大玉で、見た目の良さが特長だと思う。本州ではあまり見ないが、北海道ではかなり普通に見ることができる。ネット上で北海道農業試験場のレポートが見られるが、北海道特産の品種として期待を寄せるような記載があり、奨励されたのだろう。
今回は名寄の西條で購入した。しかし起き抜けの寝ぼけた状態で食べたので、味の方があまり記憶にない…。果汁が多かったことは記憶している。全体的にはそれほど評価は良くなかった気がするが、これ以上何を言っても仕方ないのでここまでで留めておく。
写真はオホーツク紋別の海岸で撮影。